2008年4月~6月分のバックナンバー

更新日:2022年02月12日

2008年6月25日(水曜日)

後手管理から先手管理への実践に向けて

中国四川省の大地震、まして、岩手・宮城内陸地震が起こる前の今年の3月、小野市は約60億円かけた学校整備計画を打ち出し、すでに公立学校の耐震化工事に着手している。国の公立学校耐震化補助の拡充が提案される前からである。

にもかかわらず、先日のニュースゼロをご覧になった方は、岩手・宮城内陸地震が起こったから、小野市は急きょ、後追いで学校耐震化に取り組むようになったのでは?と誤解されたのではないか。取材時の説明に反して、一部のシークエンスだけを使って、全く正反対の印象を受ける内容に変えられていたように感じた。

ニュースゼロの取材があったのは6月2日。小野市のホームページ5月14日付けの雑感《約60億円を投入する学校整備10カ年計画》を見られたのがきっかけである。取材の内容は、「行政も経営」という小野市の基本理念、学校耐震化への取り組み、小学6年生までの医療費の完全無料化、地方分権や税金の使い道の優先順位の考え方などが中心であった。

取材や撮影は3時間におよび、小野市の理念や考え方は十分理解していただけたものと思っていた。また、児童や子ども見守り隊の様子も撮影したいということで下校時間に合わせて現地撮影も行った。子どもたちもテレビに出ると大変楽しみにしていたが全てカットされていた。

先日、取材を受けた側の期待権は保障されない、という最高裁の判決が出た。報道編集の自由があるとはいえ、事前の取材説明に反するような印象を受ける内容に加え、子どもや子ども見守り隊の期待が裏切られる結果になったことが残念であった。

小野市の学校耐震化も十分にできているとはいえないなかで、昨年、政府の中央防災会議から、もし山崎断層地震が起こった場合、加西、小野、三木などの北播磨地域でも、県の想定を上回る、阪神淡路大震災と同じほどの震度の揺れが起こりうると発表された。

何度も紹介してきたように、小野市の「行政経営4つの柱」の1つは、言われてからやるのではなく、言われる前にやる「後手から先手管理」への転換である。自治体に求められる課題は非常に多い。限られた財源を何に優先して使うかが問われている。

道路、箱モノ、安全、子育て、福祉、教育、優先すべきは何か、やはり市民の安全が最優先である。年間市税の4分の3に当たる約60億円を投入する学校整備計画もそのような考え方により今年から実施に踏み切った。しかも、将来の市の財政もきちんとシミュレーションしたうえである。

そのような矢先、中国四川大地震が起こった。さらに、ここへ来て、岩手・宮城内陸地震である。まさかという驚きと、安全安心を最優先とした選択は正しかったという思いを強くした。被災された方に心よりお見舞い申し上げる次第であります。

2008年6月18日(水曜日)

ひまわりの丘公園で「ひょうご森のまつり2008」が開催

ステージの上で宝塚音楽学校の生徒たちがコーラスを歌っている写真

 6月1日ひまわりの丘公園は、昨日までの雨から一転して快晴に恵まれました。会場内を見学して廻っていると、ステージから美しく楽しげな歌が聞こえてきました。宝塚音楽学校によるコーラスです。将来のタカラジェンヌになられる女学生のすばらしい歌声を聞かせていただいた後、「ひょうご森のまつり2008」の式典が始まりました。

 この「ひょうご森のまつり」は、昭和31年に第1回「兵庫県緑化大会」という名称で、植樹を中心とした緑化普及イベントとして始まりました。平成7年度から「ひょうご森の祭典」に改称し、参加者も林業関係者中心から、県下全域から多くの人々が集い、森の大切さを認識する祭典として開催されてきました。

 平成20年度は、森林豊かな山間地ではなく、年間約100万人の来場者で賑わう「ひまわりの丘公園」を会場にと、小野市が開催地として選ばれました。この「ひまわりの丘公園」は、甲子園球場2つ分の広大な敷地と、豊かな緑に囲まれ、国道175号の傍にあることから、県下どの地域からも誰もが気軽に訪れることの出来る公園であります。多くの方々をお招きして交流を深めることで、森やみどりの素晴らしさ、そして、小野市の素晴らしさもいっぱい知っていただきたいという思いでした。

 この日、ひまわりの丘公園に来場された方は、約1万人以上に及んでいたそうです。そのような中で、主催者あいさつでは自らが広報部長となって、県内外からお越しになられた方々に、会場の説明を含め広く小野市の情報発信をいたしました。

 メイン会場の「ひまわりの丘公園」は、従来からよくある「道の駅」ではなく、子供から大人まで1日ゆっくり過ごせるというコンセプトとしております。広大な芝生広場はもとより、農産物直売所や特産品販売所、児童館等を設置し、都市と農山村の交流の拠点である「道のオアシス」として整備しました。公園内の花壇は、約100名のガーデニングボランティアの方々が植栽管理されており、公園前の農地では、春は菜の花、夏は市花のひまわり、秋はコスモスが見どころとなっています。

 そして、サブ会場の小野市を代表する国宝「浄土寺」では、鎌倉時代にあの仏師快慶(かいけい)によって作られた国宝阿弥陀三尊立像の無料拝観や、野点(のだて)茶席にてお茶の振る舞いを行いました。浄土寺までは散策道が完成したばかりです。当日は、浄土寺までは人力車も3台運行しており、途中の浄谷北池の堤に描かれた国宝浄土寺のレリーフもご覧いただきながら、多くの方に伝統文化と歴史を堪能していただきました。

 それから、今年の5月には「白雲谷温泉ゆぴか」において、世界の薬石18種類22床の岩盤浴ベッドを有する「岩盤浴施設」がオープンし、新たに美容と健康そして癒しの空間が誕生しました。この岩盤浴は、利用者から「こんな気持ちの良い気分ははじめて」と大変好評であり、来場者の方々には是非ともお帰りの際に利用していただくよう申しました。

 その他、申し上げたい小野市の魅力は山ほどございますが、まさに小野にしかない、小野らしいオンリーワンの取り組みなど、小野の素晴らしさを来場された皆様にお伝えしたわけであります。

15名ほどの緑の少年団がステージの上に並んで立っている写真

 一方、小野市では森林保全としての里山整備を進めるなか、平成11年には「きすみの見晴らしの森」、平成14年には「かわい快適の森」が完成しました。それぞれの里山では、地元の方々が中心となって「森林ボランティア」や「緑の少年団」が結成されており、里山の保全活動や、PR活動など市民参画による活動が活発化しております。

森林ボランティアの人たちが緑の少年団と一緒に芝生広場の一角に植樹をしている様子の写真

 式典の後、「緑の少年団」の皆さんとともに、芝生広場の一角に植樹を行いました。森林は、排出された二酸化炭素などの温室効果ガスを吸収してくれたり、洪水や水不足を防ぐ水の調節をしてくれたりします。平成16年の台風23号では大きな被害が出ましたが、大雨時には表土を膨大な雨にも流されずにつなぎ止めてくれるなど、森林の大きな機能であります。

森林ボランティアと緑の少年団たちの集合写真

 地球温暖化など環境問題は世界的な課題であります。環境保全に対しては、個々の取り組みでは大きな効果は得られませんが、それを多くの人々に広めていくことで大きな効果が期待できます。そういった意味では、このひまわりの丘公園で約1万人に及ぶ方々に来場していただき、「ひょうご森のまつり」が盛大に開催できたことは大変意義のあることであったと思いました。

 最後に、主催者として出席された井戸敏三兵庫県知事から、その場で詠まれたうたをいただきました。
 「青空と緑おりなす初夏の丘 植えたる木々の育ちを祈る」
 知事と一緒に植えた県木クスノキの成長を共に見守っていきたいと思っています。

2008年6月11日(水曜日)

小野市の魅力を発信しました

先週、全国市長会への出張をはさんで2度のテレビ取材がありました。1つは、日本テレビの「ニュースZERO」による学校の耐震化についてで、もう1つは、eo光テレビ(K-CAT)『街角トレジャーハンター』によるまちの魅力の紹介でした。学校の耐震化についての思いは、以前の雑感(5月14日)で取り上げましたので、この度は、『街角トレジャーハンター』によるインタビューを紹介します。

市長がニュースZEROからインタビューを受けている様子を撮影している写真

(ハンター) この「うるおい交流館エクラ」の施設、外には緑があふれているし、とても開放感があって明るくてすばらしいですね。市民の皆さんはこの施設をどのように利用されているんでしょうか。

(市長) この施設は、3年ほど前に小野市独自で建設したものですけれど、多目的に利用できるこのハートフルサロン、500名収容可能なエクラホールや、大中会議室、特別会議室を備え、市民活動の用途に応じて利用が可能です。利用者は年間約27万人にのぼり、小野市だけではなく広く北播磨地域の市民活動の拠点として様々な活動をされています。いろんな催し物や団体の活動などで、エクラホールや大会議室は、土曜、日曜の主だった日は来年まで予約で一杯のようです。

(ハンター) まだ6月なのに!ここに来ればいろんな方とふれあえる機会が増えるということですね。

(市長) このハートフルサロンでは、多くの子どもたちが受験勉強もしています。この施設の隣は貸出冊数7年連続日本一になった市立図書館ですが、そこではなく、ここで勉強しているんですね。その中から有名大学に合格した子どもたちもいます。開放感があって落ち着いて勉強ができるんでしょうか。夜10時まで開いています。

(ハンター) 自然が多い小野市ですけれど、先ほど「ひまわりの丘公園」へ行ってきました。ひまわりがたくさん咲いていて本当にきれいでした。

(市長) 春は菜の花、夏は市花のひまわり、秋はコスモスが楽しめます。「ひまわりの丘公園」は、4車線化された国道175号の傍にあり、甲子園球場2つ分の広い芝生公園です。通常、国道沿いには道の駅というのが整備されていますが、従来型の道の駅ではなく、1日ゆっくりと楽しんでいただける公園にしたいと思って整備しました。児童館や地場産農産物の直売所、山田錦という酒米でつくった米パン工房もあります。入園無料ですから。年間約100万人の方が来られます。

(ハンター) 小野市の特徴というと、どんな市なのですか。

(市長) 少し理屈っぽくなりますが、小野市は「行政も経営だ」という考え方で「4つの柱」を中心にすえ、様々なことに取り組んでいます。1つ目は、市民を顧客と捉えた「顧客満足度志向」。2つ目は、何をやっているのかではなく何をなしえたかという成果を問う「成果主義」。3つ目は、どこの市でも同じようなことをやっていますが、画一的横並びの仲良しクラブから脱却した「オンリーワン」。4つ目は、言われてからやるのではなく、言われる前にやるという「後手から先手管理」です。

この4つを軸にして、いろんなことを市民と一緒にやっています。このエクラもそうですし、「ひまわりの丘公園」や「きらら通り」も植栽ボランティアに支えられています。一番重要なことは、小野市の取り組みに大勢の市民が参画していただいていることです。「行政の下請けではない。自らを持って主体的に小野市を変えていこう」とこのような気運が盛り上がってきたことです。

(ハンター) 市長は就任以来「変えよう小野、変わろう小野市」というメッセージを理念として掲げられていると伺いましたが、具体的にどのような取り組みに力をいれておられるのでしょうか。

(市長) 大事なことは、「今まではこうであったという前例を踏襲することなかれ。かくあらねばならんという固定観念にとらわれることなかれ」ということで、自らにも絶えず言い聞かせてきました。

駅は切符を売るところではないという発想で、JR加古川線の5駅全てを改築しました。そばや巻きずしが好評の小野町駅、地場産小麦で作ったうどんが味わえる河合西駅(太閤の渡し)、陶芸が楽しめる粟生駅(あお陶遊館)。つまり従来型の発想ではなく、駅こそコミュニティの場という考え方です。あの市でやっているからとか、ほかの市ではこういう施設があるから同じものが必要だとか、もうそのような時代ではないと思います。

小野まつりをはじめとするイベントなどの「ことおこし」。JR駅舎改築やきらら通りの整備などの「ものおこし」。そして、それらを支える「人おこし」。この「3つのおこし」に加え、賑わいづくりをやって、その賑わいづくりが誇りづくりとなり、それが小野市に対する愛着づくりへとつながるということです。とにかく行政だけが牛耳る時代は終わったということです。そのような思いを市民と共有することが大切ではないかと思っています。

市長がニュースZEROからインタビューを受けている写真

(ハンター) 小野市にはすばらしいところがたくさんあると思うんですけれど、市長が思っておられる小野市の宝物って何でしょうか。

(市長) 宝物は、やはり「人」です。いろんな小野市流の施設ができました。白雲谷温泉ゆぴか、ひまわりの丘公園、おの桜づつみ回廊、あお陶遊館、太閤の渡しなど。でもそれを支えてくれているのは、多くの市民です。小野市では、行財政改革を徹底的に行い、兵庫県下29市中最少の職員数で仕事をし、それなりの健全財政を維持しています。そのベースは、自らでできることは自分たちでやろうと、支えてくれた市民だと思っています。

(ハンター) 市長の話を聞いてこれから小野市を巡るのが楽しみになってきました。今日はお忙しいところありがとうございました。

2008年6月4日(水曜日)

「短歌のまち小野市」を全国へ発信 ~第19回上田三四二記念「小野市短歌フォーラム」~

ステージの上で男性が表彰されている小野市短歌フォーラムの写真

 先週、全国各地から多くの方を「うるおい交流館エクラ」にお迎えして、上田三四二記念『小野市短歌フォーラム』を開催いたしました。この「小野市短歌フォーラム」は、小野市の生んだ偉大な歌人 上田三四二氏の功績を称えて、平成元年に「短歌 上田三四二賞」として制定され、今年で第19回目の大会となります。

 今年も大変多くの投稿をいただきました。今回の投稿数につきましては、一般の部では、全国47都道府県と海外からも合せまして1,610首ものご投稿をいただき、小・中・高校生の部では、全国各地の学校から4,202首の作品が寄せられ、合わせて5,812首という過去最高のご投稿をいただきました。第1回目から今年までの19年の間に、実に6万人を超える方から投稿をいただいています。有難うございました。

 そして、その選者には、女流歌人の第一人者で、現代歌人協会理事、朝日歌壇選者、そして日本芸術院会員の馬場あき子先生、宮中歌会始詠進歌選者及び朝日歌壇選者の永田和宏先生、兵庫県歌人クラブ顧問や神戸新聞歌壇選者の米口實先生という日本を代表する先生方を長年にわたりお迎えしています。

 また、第1部では「わたしの好きな短歌」として、辻井(つじい)喬(たかし)先生に講師としてお越しいただきました。辻井先生は、西武百貨店を核に、西友、パルコなどセゾングループを築かれた堤清二氏であり、「辻井喬」は筆名であります。経営の一線を退かれた後は、多くの作品を発表され、最近では毎週土曜の新聞朝刊で自分史など連載されており、よく拝見するところであります。

 さて、当日は、雨というあいにくの天候でありましたが、会場入口では、播州太鼓による歓迎の太鼓をはじめ、小野市文化連盟芸能部のステージや茶道同好会のみなさんによる大茶会(だいちゃかい)などで大変盛り上げていただきました。また、受付や案内では、市民の方で構成された実行委員の方々や市内の中学生が中心となって活躍していただき、全国からお越しになる皆さんを盛大にお迎えしていただきました。

 このように、この短歌フォーラムでは、多くのボランティアである市民の方々によって支えられており、まさに参画と協働を実践しているところであります。

 一方、エクラホールでは、神戸市立兵庫商業高等学校の「龍獅團(りゅうしだん)」の歓迎の舞いを披露されました。世界で3本の指に入るその演舞は何度も拝見しておりますが、やはり「良いものは何回見ても良い」と、再び感動が蘇ってきました。そして、ふと、この龍獅團の演舞を短歌にしてみたいなと思いました。しかし、いざ短歌にするには大変難しいものです。

 第2部の表彰に移る前に申し訳ないと思いながら、隣に座っていらっしゃいました馬場先生に、勉強の意味も込めて歌を作っていただきました。
 「龍獅團 微妙 大胆に 跳梁し 我が遥かなる パッションの空」
 龍師団の微妙かつ大胆に飛び跳ねる演技に、我が若き日の情熱を思い起こしたという歌であります。即興で作られるところはさすがだなと感動しました。

 この歌をご来場の皆様にも是非聴いていただきたいと思い、第2部の表彰式のはじめで、サプライズとしてこの歌を披露させていただきました。その後、馬場先生から「(披露したことに対して)市長恨みます」とお叱りをうけましたが、歌の解説までいただき、大変会場も盛り上がりました。

受賞された歌がスクリーンで紹介されている様子の写真

 選評では、受賞された歌がスクリーンで紹介されるなか、歌の情景や感情が伝わり、実際に体験してみたいと感じる時があります。斉藤茂吉の歌に「最上川 逆白波の たつまでに ふぶくゆうべと なりにけるかも」という歌がございます。私は昨年の11月に最上川の川下りに行ってまいりました。川の水しぶきなど、現場に行って実感、体感するのは良いものでありました。短歌を通じて、こういった楽しみ方もあるのだなと実感したところです。

 さて、来年度は20回目迎える記念すべき年であります。小野らしい、オンリーワンの短歌フォーラムの開催に向けて既に取り組みは始まっております。常に次の次ぎを考え、毎年毎年、進化し続ける短歌フォーラムとして、今後も市民の皆さまと共に「短歌のまち小野市」を全国に発信してまいりたいと思います。

2008年5月28日(水曜日)

河川はインフラ中のインフラ

社会資本整備審議会で市長が資料を見ながら発言している写真

先日、国土交通省の社会資本整備審議会 河川整備基本方針検討小委員会に専門委員の一人として出席した。議題は、山形県の赤川及び兵庫県の加古川水系の河川整備基本方針の策定についてであった。私は、河川関係の専門家ではないが、地元自治体の首長として加古川に対する思いを述べさせていただいた。

加古川は兵庫県の真ん中を流れる長さ96キロメートル、面積約1730平方キロメートル、11市3町に及ぶ兵庫県下最大の河川である。丹波市を源に大小129の支流を集め播磨灘に注いでいる。昔から肥沃な米どころを形成し、物資の運搬や文化を広めてきた。川にはいくつもの井堰が設けられ、その堰から汲み上げられた水はユミゾと呼ばれる長い水路で広い耕地に運ばれていき田畑を潤してきた。

江戸時代はじめ慶長9年(1604年)には、姫路城主池田輝政が舟運を完成させ、高瀬船の運行により、丹波、氷上、播磨の材木や米などの物資を高砂の港から大阪、江戸をはじめ全国に運ぶ体制が整った。1804年、海運業の家業を継いだ太郎太夫村(現在の小野市市場町)の6代目近藤亀蔵(かめぞう)は、北は松前(まつまえ)から西は長崎まで大帆船(だいはんせん)を仕立て、西日本一といわれる豪商にまでなったそうである。

その加古川は、過去に何回かの氾濫も繰り返してきた。近年、小野市では、1965年に560ミリ、1976年には384ミリ、1983年257ミリという豪雨により洪水が発生した。先般の2004年の台風23号では203.5ミリであり、過去の洪水時と比べるとそれほど多い降雨量でなかったが、戦後最大の流量を記録した。

加古川流域で浸水家屋は1652棟に及び、上流の西脇市では死者もでた。小野市でも市制施行(1954年)以来初めての自衛隊の出動要請を行った。原因は、減反による田んぼの保水能力の低下や農業基盤整備などで排水路が完備したことにより流速が早くなったことなどではないかといわれている。

「災害は忘れたころにやってくる」といわれるが、温暖化の影響か、最近は「忘れる前に起こる」といっても過言ではない。
加古川上流部(西脇市域)においては、激特事業(河川激甚災害対策特別緊急事業)による災害復旧工事が行われている。あれほどの大災害であったので、その復旧工事を優先することはいたしかたない。しかし一方で、下流には未整備のままのところがたくさん残っており、上流部が整備されたことによって逆に下流部が心配である。河川整備は、本来下流から上流へと行われるのが常道だと思う。国には全体でバランスのとれた整備をお願いしたいと思っている。

河川整備の基本的な考え方は、河川は、人の生命財産に関わるインフラ中のインフラであるということである。リスクマネジメントの基本は、起こってからやるのではなく、起こる前に準備しておく「後手から先手管理」である。民間企業ではPM(Preventive Maintenance)、つまり「予防保全」は当り前であるし、そのキーワードはスピード、セーフティ、そして専門的見地からのスペシャリティの頭文字をとった「3S」である。

河川は、歴史、文化を育み、そのまちの景観を形成してきた。大事なことは河川を活用した個性ある地域づくりであり、それは地域資源に付加価値をつけるということである。小野市では、加古川の左岸に、長さ4キロメートルにわたる西日本最大級の「おの桜づつみ回廊」が国土交通省の協力のもと、6年越しで完成した。桜の木はオーナー制で、650本の桜は1本2万円で全て完売した。

これなら1本5万円にしていてもよかったかなと今になって欲を出している。横浜、千葉、大阪、京都、奈良、岡山、鳥取、北九州などからもオーナーになっていただいた。西日本有数の桜の名所として後生に残せることを誇りに思っている。

ポイントは、「画一的横並びの仲良しクラブ」から脱却したオンリーワンの整備であり、河川を基軸とした「参画と協働」の仕組みづくりである。地域活性化で必要なことは、「ことおこし」、「ものおこし」、それらを支える「人おこし」であり、それらが三位一体となって、「賑わいづくり」が「誇りづくり」となり、誇りづくりが郷土を愛する「愛着づくり」へつながるものと確信している。

河川整備のキーワードは、

  • 河川はインフラ中のインフラ
  • 河川はそのまちの景観
  • 河川を基軸とした美しいまちづくり
  • 重要なことは河川を活用した個性ある地域づくり
  • 地域資源に付加価値をつける「3R構想」
  • 「画一的横並びの仲良しクラブ」から脱却した河川整備が不可欠
  • 民間ではPM(予防保全)は当り前
  • 予防保全のキーワードは「3S」
  • 公共工事に求められるのは「QCD+CSR」
  • 維持、管理、保全は「後手から先手管理」がポイント
  • 維持管理でも「官と民の役割分担の明確化」が不可欠
  • 河川を基軸とした「参画と協働」の実践

である。地方の小さな市からではあるが、私の思いと小野市の情報発信をさせていただいた次第である。

2008年5月21日(水曜日)

変わり続けるPTA活動

 「もったいないな!は地球を救う」という環境の大切さを表現した創作劇を、小野市連合PTA総会で拝見いたしました。小野市連合PTAの役員さん方で構成されたグループ「十二単(じゅうにひとえ)」により、上演された劇であります。三世代が同居する世帯のなかで、自分たちでもできる省エネ生活から地球温暖化、BDF(バイオディーゼル燃料)などわかりやすく表現されていました。

15名ほどのPTAの人たちの集合写真

 「BDFを市のバスに利用する」と目標を掲げられ、「エコひろめたぁ~い(隊)」(サザエさんの替え歌)の大合唱で幕は下りました。「環境の大切さを、まず、親が示そう」という取り組みに対し敬意を表すると共に、近年のPTA活動が様変わりしてきたように感じております。

 数年前に私は、以前と同じことが繰り返し行われていたPTA活動をみて、「PTA活動を見直す時期では」と会長さんに申しました。それに対し当時の会長さんは、「PTAを必ずや変えて見せます」と決意されたのを覚えています。そして、平成17年度には教育委員会から自立して、県下初の連合PTAの事務局までつくられたわけであります。

 新しくなった連合PTAは、一年一課題主義に基づいて行事等を実施されています。平成17年度には新たに安全部を設置し、地域で子どもを見守ろう運動などの「安全安心のネットワーク化」を図り、平成18年度には「食の安全」を改めて見直すなかで、食育の啓発を促進するため劇団「十二単」をPTA役員で結成し、その取り組みが新聞等で大きく紹介されました。

 そして昨年度、「エコプラン(環境)」をテーマに取り組まれ、これまでの廃品回収に加えて、新たな事業として使用済み天ぷら油の回収を始められました。この度の環境劇による啓発活動を含め、リサイクルや資源循環から環境保護を考えるなど、子供たちが環境に興味を持つために保護者自らが率先して実践されています。

 行政、教育、団体活動においても同様でありますが、「今まではこうであったという前例を踏襲することなかれ、かくあらねばならんという固定観念にとらわれることなかれ」という信念を持ち、まさに、ゼロベースの発想で、あらゆる面でそのやり方や仕組みを変えていくということが重要であります。

 今後も連合PTAを支える方々は、自分たちの思いのなかでしっかりと方向性を持って活動されることで、PTA活動の更なる進化に向かって取り組んでいただきたいと考えます。
 新しく生まれ変わった、そして今後も変わり続けていくPTA活動に期待します。

2008年5月14日(水曜日)

約60億円を投入する学校整備10カ年計画

平成28年度までに約60億円を投入し、市内全ての学校の整備を完了させる。安全安心な教育環境を維持するために、本年度から学校施設の耐震補強、大規模改修及び改築工事に計画的に取組むことにした。小野市の学校は、小学校8校、中学校4校、特別支援学校1校の計13校、計51棟であり、平成28年度までには全ての整備を終えたいと考えている。

建て替え予定の3階建ての中学校の外観の写真

老朽化により建て替える学校は小学校、中学校それぞれ1校づつ。耐震化補強を行うのは小学校2校、中学校3校の校舎計10棟と体育館5棟。建築後25年以上経過した小学校1校、中学校2校の校舎7棟、体育館2棟も大規模改修を行う。特別支援学校に体育館も新築する。

小野市の耐震化率は55%。兵庫県下で5割に達しない自治体が11市町あるものの全国平均の58.6%からすれば遅れている。どの自治体も耐震化工事の必要性は認識されているが、厳しい財政事情でなかなか進まないのが実態である。小野市では、この際、従来からの予定期間を短縮し、耐震化補強は今年と来年の2年間で終わらせることにした。その後、大規模改修を行い、2つの学校の建て替えに入る。

この大事業は市全体の財政上のガイドライン(目標値)を設けて計画した。すなわち、1.一般会計の借金にあたる市債残高を140億円以上に増やさないこと。2.預金にあたる基金残高を60億円以下まで減らさないこと。3.そして、実質公債費比率を15%に維持することである。

借金にあたる市債残高は、平成16年度の176億円をピークに昨年度は152億円まで減らし、本年度はさらに143億円まで減らす見込みである。152億円という金額は、市民一人あたりにすれば県下29市中3番目に少ない額であり、目標とする140億円では一番少ない金額となる。

預金にあたる基金残高は、平成10年度の52億円から3年間で80億円にまで増やし、それをほぼキープしてきた。市民一人あたりでは県下29市中4番目に多い金額である。目標とする60億円では県下8番目となる。

実質公債費比率は、収入に対する実質的な借金返済の割合であり、18%を超えると県の許可なしに借金ができなくなる。小野市では現在、16.7%と北播磨地域でもっとも低い値で、本年度はさらに15%台まで下げる見込みである。

いうまでもなく、子どもたちが安全に安心して学べる、または生活できる環境を整えることは自治体の使命である。いざというとき学校は地域の避難所となる。学校施設の耐震化は優先して取組まなければならないことであるが、市の財政の安全もしっかり見極めたうえで結論を出した。「行政もまた経営」であるということである。

2008年5月7日(水曜日)

新たに美容・健康と癒しの空間が誕生-更なる進化を遂げた「白雲谷温泉ゆぴか」岩盤浴施設オープン

先日、5月1日に白雲谷温泉ゆぴかで「岩盤浴施設」と「観光交流センター」がオープンし、新たに美容と健康そして癒しの空間が誕生しました。

 この「白雲谷温泉ゆぴか」は、平成16年3月にオープンして以来、年間40万人もの方に利用されております。また、ナトリウムやカルシウムなどのミネラル分は開業当時の温泉基準の10倍から14倍へと進化し、更なる温浴効果を実感していただいており、昨年1月にはオープン4年を待たずに総入浴者数150万人を達成したところです。

白雲谷温泉ゆぴかで岩盤浴施設と観光交流センターがオープンした記念のテープカットの写真

この岩盤浴施設の設置については、以前よりゆぴかを利用される皆様から岩盤浴の設置に対する強い要望があり、竣工式典の折にも利用者の方から「岩盤浴のオープンを心待ちにしていました」との声を聞きました。まさに小野市の行政経営の柱であります市民=顧客と捉えた「顧客満足度志向」の追及により実現したものであり、そして、ここにしかないという小野らしさを追求する「オンリーワン」の取り組みであります。

広々とした空間にソファがいくつも置かれている岩盤の待合室の写真

 岩盤浴施設の特徴は、暁(あか)月(つき)庵(あん)(女性専用)、風月(ふうげつ)庵(あん)(男女共用)、華(か)月(げつ)庵(あん)(3~4名用個室)の3つの部屋があり、県内でも珍しい単独式ベッドを採用しています。岩盤浴の命ともいえる岩盤鉱石には、欧州産のバドガシュタインやゲルマニウム鉱石など世界の薬石(やくせき)を集め、18種類22床の岩盤浴ベッドを設置しました。また、広々とした待合室も完備し、ゆったりとリラックスしてくつろいでいただけるように工夫を凝らしてあります。

岩盤浴ベッドに女性が寝っ転がっている写真

岩盤浴は、天然鉱石から発せられる赤外線等の効果によって、全身の新陳代謝が非常に活発になり、ダイエットや免疫力を高める効果があるといわれています。その他、ホットヨガスタジオも備えており、公共施設としては国内でも珍しい施設であります。
 オープン初日、岩盤浴を利用された方からは、「他の施設とは比べられないないほどすばらしい」「こんな気持ちの良い気分ははじめて」などご満足いただいております。

 同じくオープンした「観光交流センター」には、JA兵庫みらいによる地元の新鮮な野菜の直売所を設置しました。従来から、地域の方々がテントを張って直売所を運営されていましたが、地元住民の熱心な要望から整備いたしました。ひまわりの丘公園の直売所「サンパティオおの」に負けないくらい大繁盛すると共に、このセンターが地域活性化の起爆剤の役割を担うことを期待しています。

 今年度から、JR粟生駅前に陶芸体験ができる「あお陶遊館アルテ」、地元の二つの女性グループの熱意ある発意により実現したコミュニティサロン「太閤の渡し」、そして加古川の左岸に長さ4キロメートルにわたる西日本最大級の「おの桜づつみ回廊」が完成しました。加えて、さらに進化した「白雲谷温泉ゆぴか」が、多くの方々との憩いの場、交流の場、そして地域活性化の拠点として、皆様に大いに利用していただきたいと思います。

2008年4月30日(水曜日)

行財政改革、地域医療、安全安心なまちづくりへの提言

先週、知事ほか県幹部と市町長が一堂に会する「県・市町懇話会」が県公館で開催された。県の事業や重要施策の説明を受け、各地域の課題について意見交換する会議で、毎年、1月と4月に県主催で開催されている。

席上、何点か、意見なり提案を申し上げた。主なものをご紹介すると、1つ目は、北播磨県民局の再編について
県では、危機的財政状況の中で、県下10県民局体制を5県民局1センター体制へ変更するという新行革案が昨年示された。北播磨県民局は、東播磨県民局に統合し、代わりに北播磨の支局として残すという内容であった。

しかし、支局→県民局→県庁という3階層では、意思決定や情報が遅くなり、機能低下は避けられない。特に災害など緊急を要する対応などが心配である。また、北播磨県民局は、地域密着、現地解決型を目指して7年前に増やされた県民局の一つであり、ようやく地域にも根付いてきたところである。

廃止や単に規模縮小だけが行財政改革ではない。思い切って組織をスリム化して更なる機能を強化することで、地域密着、現地解決型という県民局本来の役割が果たせるのではないかと思っている。「組織の肥大化は、機能の低下を招く」ということである。もっとも、機構改革とか人事というものは、そこのトップ自らが判断するものであるから、あえて知事さんの答弁は求めませんでした。

2つ目は、地域医療を守るための医師の確保について
勤務医が不足している現在、公立病院にとって医師を確保するということは、全国的に深刻な問題である。北播磨地域も例外ではない。4年前と比べると北播磨公立5病院で21%、41名もの医師が辞め、多くの診療科が閉鎖された。かろうじて小野市民病院は診療科トータルで医師の数は減っていない。

しかし、勤務医がますます減少する中で、県立新加古川病院が来年3月に完成することに懸念を感じている。大きな県立病院ができれば、規模の小さい公立病院は、たちまちにしてその恩恵ではなく、被害を受けることになる。

公立病院は、医師の確保について自ら努力することは当然のことであるが、地域医療を守るということは県が率先して取り組まれるべき責務である。県立病院と公立病院で医師の争奪戦にならないようにお互い連携ネットワークをしっかりとっていただくよう申し上げた。

3つ目は、信号機の設置について
小野市では9年前から「市長への手紙」など多様な広聴の仕組みを構築しており、今までに寄せられた意見や要望は6500件にも及んでいる。中でも多いのが、信号機の設置などの安全安心に関することである。個人からだけでなく、自治会やPTAからも毎年のように要望がある。

危険度の高い方から優先順位をつけ、毎年、警察署へ要望するものの、この4年間は1機も設置されない状況が続いている。信号機の設置は、警察署を通じて県の公安委員会で審査されるが、県警本部や公安委員会で必要と認められても、県の予算の総枠の問題として先延ばしとなっているのが実情のようである。

県の予算が足りないというだけの理由であれば、市独自にその費用を出してでも市民の生命を守りたい。小野市では、安全安心のまちづくりに本気で取り組んでいる。県警本部から現職の警視を市民安全部部長として招請し、警察官OBによる安全安心パトロールを実施して刑法犯罪件数を40%減らすことができた。

市独自にその費用を出してでも設置したいというと、財政的に余裕があるんですねと言われそうであるが、そうではなくて、ほかの予算を削ってでも安全安心のために使いたいというトップとしての判断である。要望があったところ全てに設置するわけではない。あくまで県の公安委員会が認めたところで、どうしても必要なところ1カ所程度は市独自で設置できるような仕組みを構築してもらいたい思いである。

ところが、地方財政法という法律において、地方公共団体は、経費の負担区分が定められている事務について、他の地方公共団体に負担させてはならない旨が規定されており、信号機の設置費用については、国や県が市町に負担させることはできないことになっている。

ハードルは非常に高いが、その実現のために地方財政法の改正を国に働きかけてもらいたいと要請した。「ハートフルシティおの」の実現のために、まさに地方から国を変えるという意気込みで申し上げたところである。

2008年4月23日(水曜日)

これからの自治体経営は地域の個性や独自性を打ち出すことが不可欠

先日、内閣府の「社会意識に関する世論調査」の結果が発表された。4割を超える人が「景気」「物価」「食糧」の分野で悪い方に向かっていると感じている。1人あたり国内総生産(GDP)は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、15年前の第1位から今や18位に後退し、大田経済財政担当相は、「残念ながら、もはや日本は『経済は一流』ではない」と言われた。

作家の堺屋太一さんは、1990年代を「失われた10年」、2000年代の10年は「失う10年」になりそうだと。多くの面で、日本の社会体質がどんどん悪化しているといわれている。厳しい現状分析を披露して国民の危機感を高めることで、国全体が世界に挑戦するよう奮起を促すねらいからだと思う。

私は、以前より「こんなはずではなかった21世紀」という言葉をいろんな席で述べてきた。例えば、人口、人口は増え続けるものだと思っていたらそうではなかった。土地、土地は持っていたら値上がりするものだと思っていたらそうではなかった。学歴、大学さえ出ておれば将来はそれなりのポストにつけると思っていたらそうではなかった。

経済、経済は右肩上がりで成長し続けるものだと思っていたらそうではなかった。企業、大企業はつぶれないと思っていたら、昔の名前で残っている大手銀行は存在しない。老後、老後はゆったり年金でと思っていたら、介護保険や後期高齢者医療保険など負担増が避けられなくなった。そして、自治体、自治体は絶対に潰れないと思っていたら、破綻するところも現れている。

市長に就任した10年前、これからはつぶれる自治体も出てくるだろう。公務員といえども給料が下がるときが来るだろうと言ったことが本当になった。まさに「こんなはずではなかった21世紀」であり、今までのやり方や価値観では通用しない時代を迎えている。求められるのは、新たな仕組みやシステムの構築である。

地方自治体にとっても、小泉政権下の三位一体改革を契機として、地方の自己実現、自己責任が大きく問われることになった。加えて、国の新たな財政指標の導入などにより自治体経営そのものが問われ、市民に対するアカウンタビリティの徹底がより強く求められる時代に入っている。

平成の大合併により全国に3232あった市町村は、現在、1787と半分近くになった。「財政再建」と「行政のスリム化」がその目的であるが、果たしてその成果はどうだったのか、しっかりと国の方で検証されることが必要ではないかと思っている。

さらに、国の方では、10年後を目途に道州制を導入しようとされている。国の機能を分け、地域の特性や課題に応じた政策を独自の判断と責任、財源で実施できるようにすると提唱されている。その趣旨には賛成であるが、単なる府県同士の合併に終わってしまわないか。道州制の議論の前に、都道府県のあり方や役割自体を見直す必要があるのではないかと思っている。

行財政改革のために自治体の広域化を進めようとする流れの中で、広域化することにより市民サービスが向上したり効率的になる業務は共同化すればよい。しかし一方で、地域の特性や独自性、個性を打ち出すことで、地域を活性化させることが重要である。

社会経済情勢の変化により人々の価値観も多種多様となった。行政も画一的ではなく、多様なあり方があってよいのではないかと思っている。好むと好まざるとにかかわらず、自治体間競争はもはや避けて通れない。「画一的横並びの仲良しクラブ」ではなく、お互い切磋琢磨することが地域の更なる活性化につながるものと考えている。

2008年4月16日(水曜日)

更に増えた賑わいづくりの拠点-「あお陶遊館アルテ」・「太閤の渡し」・「おの桜づつみ回廊」―

駅舎は切符を売るだけの場所ではない。地域交流や生きがいづくりの拠点になってほしい。小野市ではこれまで、JR加古川沿線の4駅(市場駅、小野町駅、河合西駅、青野原駅)の駅舎の改築や、その周辺整備を進めてきた。

あお陶遊館アルテがオープンした記念のテープカットの写真

先日、JR粟生駅前の「あお陶遊館アルテ」が、続いてJR河合西駅そばのコミュニティサロン「太閤の渡し」がオープンした。「あお陶遊館」は、南欧風の建物をイメージした建物である。名称は、公募により「アルテ」と名づけた。「アルテ」とは、イタリア語で「芸術」という意味であるが、「アオ」(粟生)、「ルーツ」(源)、「テイクオフ」(出発・発展)の頭文字でもある。

ろくろをつくっている人と、それを見学している人たちの写真

一度に100名が利用できる作業室や高温で焼くことのできる窯(かま)を備え、本格的な陶芸教室をはじめ、“絵付け”や“ろくろ”の一日体験教室も開催する。ほかにイベント広場をはじめ、多目的広場も整備した。地域の行事や催しものなどコミュニティの場として、子供からお年寄りまで幅広く利用できる施設にしている。

太閤の渡しの改修記念のテープカットの写真

コミュニティサロン「太閤の渡し」は、地元の「楽笑会」と「おばんざい」という二つの女性グループの熱意ある積極的な発意により実現した。「太閤の渡し」という名称は、近くの加古川に残る羽柴秀吉の渡船伝説にちなんだものである。二つのグループが連携して空き店舗を無償で借り、改修してコミュニティサロンとした。

地元特産の小麦「ふくほのか」を使ったうどんや地域でとれた野菜を使った惣菜などを安く販売される。周辺に住むお年寄りの買い物代行サービスもされる予定である。地元女性のパワーに、3年前に整備したJR小野町駅のそば工房「ぷらっときすみの」に負けないくらい大繁盛することを期待している。

5種類の桜が咲いているおの桜づつみ回廊の写真

一方、JR加古川線の東側を流れる加古川の左岸に、長さ4キロメートルにわたる西日本最大級の「おの桜づつみ回廊」が国土交通省の協力のもと、6年越しで完成した。ソメイヨシノやシダレザクラなど5種類、計650本の桜が植わり、美しい景観とともに潤いと安らぎの空間へと生まれ変わった。種類ごとに上流から下流へと桜の咲き誇る時期が移動する。

桜の木はオーナー制で、全て完売している。一本一本、子どもや孫の誕生、結婚記念などを記されたプレートが掲げられている。先日、母が満100歳を迎えた記念に桜の木を買ったと神戸新聞の“イイミミ”に載っていた。神戸市の方である。木の成長とともに小野市への愛着が生まれることを願っている。

小野市では、毛利元就の「3本の矢」にちなみ、県下最大の河川である加古川=リバー(River)、大正年間から走るJR加古川線=レールウェイ(Railway)、そして国道175号=ロード(Road)の3つの頭文字をとって「3本の川構想(3R構想)」と名付けて地域の活性化を進めている。

「ひまわりの丘公園」や「白雲谷温泉ゆぴか」などに加え、このたび完成したJR加古川線の「あお陶遊館アルテ」や「太閤の渡し」、そして「おの桜づつみ回廊」が多くの人々の憩いと交流の場となることを願っている。

地域活性化の柱は、「ことおこし」、「ものおこし」、それらを支える「人おこし」である。施設整備も単なるハード事業ではない。「ものおこし」の一環であり、いわばソフト事業と位置づけている。この「3つのおこし」が三位一体となって、「賑わいづくり」が「誇りづくり」となり、その「誇りづくり」が地域を愛する「愛着づくり」へと繋がっていくものと確信している。

2008年4月9日(水曜日)

使命は「市民満足度志向の徹底」

4月1日、小野市でも新規採用職員の辞令交付式を行った。採用したのは、一般事務職員、消防士、看護師、幼稚園教諭、期限付嘱託職員である。期限付嘱託職員というのは、全国的にも珍しい小野市独自の人事制度で、ONPM計画(Ono New Personnel Management Plan)という小野市の多様な人材活用制度の一環である。

この制度は、民間企業で人事の仕事も長く経験した私自身の経験から、「少しの時間面接しただけでは人の能力は分からない」という実情が発端である。最長3年間、職員と全く同じ仕事を任せる。本人にとっても、その間の体験を通して、公務員というのが自分に適した仕事かどうかを見極めることができる。

勤務体験や成果をもとに、職員として残ることを希望する者は、職員採用試験を受けていただく。また、役所の仕事が自分には向いていないと思われた方は、民間企業などで活躍されることになる。

本年度、期限付嘱託職員から、職員採用試験を受けて、一般事務職として採用された者は4名である。また、大手民間企業でのSE(システムエンジニア)経験者や、救急救命士の資格を持つ女性消防士も採用した。

社会経済生産性本部によれば今年の新入社員のタイプは、「カーリング型」といわれている。ブラシをこするのを少しでもやめると、減速したり、止まってしまったりする。こすりすぎれば、目的地点を超えてしまったりはみ出したりする。要するに、主体性とか自立性が乏しい人が多いといわれている。

しかし、小野市の新規採用職員は、そのような厳しい競争の中から選ばれた者であり、即戦力になる人材だと期待している。小野市では「行政も経営」と捉え、「顧客満足度志向」「成果主義」「オンリーワン」「後手から先手管理」の行政経営4つの柱を基本理念に行政運営を進めているが、第一番に求めたいことは(全職員に求めていることであるが)、なんと言っても市民=顧客と捉えた「市民満足度志向の徹底」である。

そのためには、「STA」が欠かせない。「STA (See and Touch and Ask)」というのは私の造語であり、シー&タッチ&アスク、すなわち、みて、ふれて、自ら求めよ、ということである。要するに、頭で考え、認識として知っていることは、目の前を通り過ぎる紙芝居のようなもので、そのときは覚えているけれど、全く身につかない。実際に自分の目で見て、自分の手で触れて、いかに体験するか。

みるといっても、単に眺めるということから、見る、観察する、推察する、そして洞察するという意味まで奥が深い。やはり、物事をしっかり見て、深く掘り下げて見抜くということが求められる。その出発点は「現場現物主義に徹する」ことである。お客様である「市民満足度志向」を追求するため、常に市民の現場に立って業務に励まなければならない。

本年度新規採用したとはいえ、小野市の正職員数は、昨年に比べて11名減の295名。病院、消防を除く市民100人当りの職員数は、引き続き、県下29市中最少の0.595名(昨年0.617)である。少数精鋭で、更に進化し続ける小野市を目指していきたいと考えている。

2008年4月2日(水曜日)

今期方針は「『更なる進化と変革』に向けてのチャレンジ」

新年度が始まった。小野市の行政経営の手法の要(かなめ)は、何度も紹介してきたとおり「小野市型方針管理制度(TQC)」である。市長方針を頂点とし、それを実現するために部長、課長、係長へブレイクダウンして具体的方針をたて、PDCAのマネジメントサイクルを展開して、「結果とプロセス」を評価し、改善を進めながら組織全体として市長方針の達成を目指すというシステムである。

年度初め、真っ先に、自ら市長方針を示している。いわばその年度の経営方針である。その市長方針を達成するために、それぞれのセクションにおいて、部長は何時までに何をどうするのか、その部長方針を達成するために課長はどうするのか、その課長方針を達成するために係長はどうするのか、組織内でしっかりと議論をしながら、目標を自ら考え、ひとつ一つ実行していく。大切なことは、職員全員が絶えず目的意識を持ち、し続けることであり、ポイントは、「目標設定」と「管理項目」を明確にすることである。

トップには、1年間の明確な方向性を示すことが求められる。トップ方針が曖昧であれば、当然のことながら組織の進むべき焦点がぼやける。逆に細かすぎれば、職員の選択範囲が狭まり主体的な活動を阻むことになる。覚えやすくしかも分かり易い明確なキーワードで示すために、自分自身、毎年この時期には頭をひねっている。

「行政も経営」であり、「より高度でより高品質なサービスをいかに低コストで提供するかを追求する」という基本理念と「顧客満足度志向」「成果主義」「オンリーワン」「後手から先手管理」の「行政経営戦略4つの柱」は全く変わらない。

自治体経営は本年度から新たなステージに入る。地方財政健全化法の適用である。既に、新聞紙上では自治体財政の健全度がランキングされるようになった。行財政改革はどこも待ったなしであるが、単なるコストカッターだけでは市民サービスは向上しない。健全財政を維持しつつも、10年先20年先を見越して発展し続ける小野市であるためにやるべきこともたくさんある。

このような状況を踏まえ、今期方針を次のとおり決定した。より高付加価値なサービスの提供を目指して更に進化し、変革し続け、そして見える成果を出していく思いである。

平成20年度の市長方針について書かれた画像

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