市長施政方針

更新日:2024年02月26日

令和6年2月 第446回小野市議会(定例会)

はじめに

第446回市議会定例会の開会にあたり、令和6年度当初予算をはじめ、重要案件の慎重なるご審議をお願い申し上げますとともに、市政に取り組む所信の一端を申し述べ、議員各位並びに市民の皆様方のご理解とご支援を賜りたいと存じます。

厳しい年の幕開けと肌感覚で実感する時代の転換点

新型コロナウイルス感染症が昨年5月に第5類に分類され、「新たな日常」の中で、“賃金と物価の好循環”を目指すべき新年の幕開けは、能登半島での地震に始まり、改めて地震大国「日本」を目のあたりにする厳しいものとなりました。

この能登半島地震では、厳しい寒さの中での避難生活に加え、被害の大きい地域につながる主要道路が寸断され、救助活動や物資輸送を阻むという「半島防災の困難さ」や「過疎地での復興」という新たな問題が提起されました。

平成7年(1995年)の阪神淡路大震災から7年プラスマイナス2年程度の周期で、震度7以上の大地震が日本のどこかで発災していることから、小野市においても、地震被害を自分事として受け止め、死者が最大32万3千人という、気の遠くなるような被害が想定される「南海トラフ地震」に「悲観的に備える」ために、耐震化など、何ができるかを問い続ける意識を醸成することが必要であります。

その一方で、日経平均株価は、34年ぶりの高値をつけ、「失われた30年」といわれてきた上場企業の稼ぐ力は停滞を脱して、この3月期の純利益も13%増え、3年連続で過去最高となる見通しであると報道されております。この30年間、物価も賃金も動かない、日本に染み付いた「据え置き経済」から、令和6年度は、賃上げを伴う物価上昇の好循環に入る経済の転換点となり得る大切な年であります。

同時に、今年は、物流における「2024年問題」が本格化しますが、これは、「非効率な物流」を基礎に、在庫を減らし、効率性を高めてきた生産システムを転換する必要があることから、安く早く運ぶ物流網を揺るがすとともに、「運賃や在庫管理コストの上昇」などの影響とともに、人手不足が益々深刻化してまいります。

さらに、日本の人口は、50年後には今の7割の約8,700万人、2100年には、今よりも半減し、6,300万人程度と見込まれており、2030年以降になると、総人口が毎年70万人を超すペースで減る急激な減少期に入ります。人口が急激かつ止めどなく減り続けると、消費は減り、国内市場は急激に縮小することになり、社会全体が果てしない縮小と撤退を強いられる時代に入ります。

「静かな有事」とも言われる人口減少は、小野市を含む北播磨地域においては、さらに加速度的に進行し、そのスピードは50年ではなく、25年で今の7割まで減少するという推計が示されています。すなわち、現在26万人の北播磨地域の人口が、約25年後の2050年には約18万人弱となり、小野市3.6万人、三木市4.8万人、加東市3.4万人、加西市2.7万人、西脇市2.4万人、多可町0.9万人にまで減少し、直面する社会課題がより現実味を帯びることになりますので、広域連携などを積極的に推進していかなければなりません。

人口減少に加え、高齢化率が4割で高止まりする超高齢社会が続きますので、賃上げの恩恵を受けにくい高齢者の消費の活性化が、今後の社会の在り様を左右するとともに、急速に細る就業者数、働き手の減少が、日本の経済力の衰えに直結する時代が到来し、縮小する市場を奪い合う競争も拡大していくと考えられます。

社会保障制度の維持もいっそうの厳しさが増していくことになり、OECD(経済協力開発機構)が提言しているように、世界では日本と韓国のみに存在する定年制の廃止など、社会制度改革の対応が目の前に迫っております。

その一方で、Z世代をはじめとした価値観の多様化により、世代を超えて共感を得ることが困難になってくるものと考えられます。しかしながら、社会は人により成り立っていることに変わりはなく、人間本来の在り様まで変わるはずもないため、新たな時代の価値観を創造し、将来のビジョンをわかりやすく伝えるというリーダーに求められる役割は、ますます重要性を増してくるものと考えております。

新たな価値観の創造で新時代を切り拓く

令和6年度は、昭和29年12月1日市制施行以来、70周年の節目の年であります。この70年の歩みを振り返りますと、市制施行当時35,000人で発足した小野市は、平成12年には5万人を超えましたが、少子高齢化の大きな流れの中で、現在では47,000人の人口を維持しております。

この70年の歩みの中にあっても、世界情勢の緊張を背景としたオイルショック、急激な円高を背景とした産業の空洞化など、どの時代においても幾多の試練があり、先人の皆様は、それを糧として、乗り越え、現在の小野市を築いて来られたのであり、現在我々が直面する社会構造の大転換、人口減少などの情勢を、ネガティブに受け止めるのではなく、それを価値観転換のチャンスと捉えた発想の転換を行わなければなりません。

戦後79年が経ち、社会構造そのものが大きく変革している真っ只中にあることを肌感覚で実感できるようになっているからこそ、従来の価値観に捉われることなく、エネルギー政策しかり、定年制度廃止を含む社会制度改革しかり、未来を切り拓くために、我々は新たな価値観の創造にチャレンジしていかなければなりません。

「未来」とは、過去と現在とを結んだ延長線上にあるのではなく、既成概念を打ち破った先にあるのであり、「明日」は今日の延長であるという錯覚から脱却しなければなりません。「未来」を生き抜くには、変容、変転に順応することは必然であり、それがこれからの小野市を創造し続けることにつながるものであります。

基盤整備による見える成果

市制70周年を迎える令和6年度においては、これまで取り組んできた未来への投資が、目に見える成果となって動き出してまいります。

その一つ目として、国道2号バイパスと国道175号とを結ぶ「東播磨道」がいよいよ開通いたします。それにあわせ、二つ目として「東播磨道」が接続する国道175号市場東交差点付近の「6車線化」、さらには三つ目として、「ひょうご小野産業団地」から山田町を抜け小野ニュータウンへとつながる「新都市南北線」の全線開通であります。

さらに、今年から50年先を見据えた広域でのごみ処理構想にも着手することになっているほか、図書館東側の「新たなまちづくり構想」や「浄谷黒川丘陵地」活用など、小野市のポテンシャルを更なる高みへと引き上げるまちづくりを着実に進めてまいります。

その基本理念となるのが、四半世紀に及ぶ市政運営において、決してぶれることのない「行政も経営」であり、「より高度でより高品質なサービスをいかに低コストで提供するか」を追求することであります。

また、そのための「行政経営4つの柱」、すなわち、

1つに、市役所は市内最大のサービス産業の拠点であり、市民=顧客と捉えた「顧客満足度志向(CS志向)の徹底」、

2つに、何をやっているのかではなく、何をなし得たかを問う「成果主義」、

3つに、画一的横並びの仲良しクラブから脱却し、ここにしかない小野らしさ、持ち味を追求する「オンリーワン」、

そして4つに、言われてからやるのではなく言われる前にやる「後手から先手管理への転換

を基軸に市政運営を行うという姿勢も、何ら変わるものではありません。

新年度予算の主な施策

それでは、令和6年度の当初予算について申し上げます。予算額は、新庁舎建設により予算規模が膨らんだ令和元年度を除くと、過去最大規模となる232億6千万円としております。

昨年度と比較すると、額にして20億2千万円の増、率にして9.5%の増となり、国の補正予算の関係で3月補正予算に前倒しした3億8千万円と合わせると、総額236億円という、9年連続200億円超えの“積極型予算”であります。

市税収入は、賃上げに伴う個人市民税の伸びや「ひょうご小野産業団地」の稼働により、過去最高の76億5千万円を予定しておりましたが、今年6月から実施予定の「個人住民税の定額減税」により、市税収入予算額としては74億4千万円としております。ただし、減税相当額の2億1千万円は、地方特例交付金として全額国から交付されることになっております。

急激な物価高騰の影響や社会保障費の増加等に伴い、基金の取り崩し額は前年度当初予算比2億3千万円増の17億3千万円、市債発行額についても、前年度当初予算比6億5千万円増の15億6千万円と、いずれも増加しておりますが、徹底した無駄の排除に取り組むことで、持続可能な健全財政基盤を確立してまいります。

予算の重点項目は、大きく「4つ」としております。
1つには、「次世代へつなぐまちづくりの推進」
2つには、「市民力による地域づくりの推進」
3つには、「子育て支援・教育環境の充実」
4つには、「安全・安心に暮らせるまちづくりの推進」であります。

≪1. 次世代へつなぐまちづくりの推進≫ 

まず、1つ目の重点項目である「次世代へつなぐまちづくりの推進」についてであります。

浄谷黒川丘陵地では、令和2年4月に「小野希望の丘陸上競技場」をオープンさせ、引き続き多角的な土地利用の検討を進めるほか、東側エリアにおいて、小野加東加西環境施設事務組合により、50年に一度の一大プロジェクトである、発電施設や余熱を利用した温水プール、グラウンドゴルフ場も備えた広域の「新ごみ処理施設」の基本構想策定に着手してまいります。

次に、「新都市南北線」では、令和7年春の完成に向け、北工区の整備が順調に進捗しております。全線が開通すれば、国道175号市場東交差点付近で発生している渋滞解消に大きく寄与するだけでなく、沿道のさらなる開発を促進し、小野市のポテンシャルを飛躍させる基盤道路となります。

先ほども申し上げました「東播磨道」の全線開通、国道175号市場東交差点付近の「6車線化」や、三木市と共同で行う「(仮称)三木スマートIC」の整備との相乗効果により、小野市のみならず北播磨地域全体のポテンシャルがより一層高まってまいります。この高いポテンシャルを最大限活用できるよう、新たな土地利用に積極的に取り組んでまいります。

同時に、「ひょうご小野産業団地」への進出企業の操業開始に伴う雇用拡大を踏まえ、働く人々の居住の場を確保するとともに、新たな商業用地の開発と誘導を図り、活気と賑わいが持続するまちづくりを進めるため、図書館東側の市街化区域編入など“シビックゾーン”エリアの拡張を進めてまいります。

また、官民問わず国を挙げた様々な取組が求められるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)については、市・商工会議所・金融機関の三者による「SDGs推進に関する連携協定」に基づきEV公用車を導入したところでありますが、引き続き、公用車の電動車化、省エネ・再エネ導入の取組を推進してまいります。

社会生活の基盤となる「マイナンバーカード」については、今年12月に健康保険証との一体化が予定される中で、市民の取得率は約9割に達しております。市民の利便性を高めるため、コンビニエンスストアにおける住民票等の証明手数料を、県内最低金額の100円に引き下げたことで、約4割の方が市役所に来庁せずに証明書を取得されるようになっております。行政手続のさらなる簡素化に向け、マイナンバーカードを活用した市公式LINEによる「持ち運べる市役所」の拡充を進めてまいります。

さらに、デジタル化の推進には、社会基盤としてのデジタルインフラの整備が必要不可欠でありますので、市の基盤地図となる地形図や都市計画図を「ベース・レジストリ」としてデジタル化し、それに道路図、水道管の位置図、地番図といった地図情報を重ねて表示できるよう、庁内統合型GIS(地理情報システム)の構築に取り組みます。

これら統合型GISで一元管理した各種情報の一部を、市民や事業者の方がWEB上で閲覧できる公開型GISも同時に構築することで、オープンデータとして誰もが地図情報を閲覧・活用できる環境を整え、市民サービスの向上を図ってまいります。

その他、「地方公共団体情報システム標準化」が全国統一的に進められておりますが、これについても、令和7年度末までに、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行を目指し、効率的かつ効果的に推進するよう取り組んでまいります。

≪2. 市民力による地域づくりの推進≫

次に、2つ目の重点項目である「市民力による地域づくりの推進」についてであります。

小野市は、令和6年12月1日に市制施行70周年を迎えます。これまで先人の皆様が築き上げてこられた功績を見つめ直し、未来へと継承していく出発点として、令和6年12月1日に「市制施行70周年記念式典」を開催いたします。

市民力を象徴する「小野まつり」は、「まつりを通して小野市を変えよう」と、大変多くの市民のご協力により大きく変貌を遂げてまいりました。集客数は、昨年度16万人と過去最高を記録し、「おの恋おどり」も関西で最大級のダンスイベントに成長しております。

市制70年の節目となる今年度は、コロナ禍からの完全脱却により、過去最多となった3,000人を超える「おの恋おどり」の参加数を見込み、恒例の5,000発の花火とともに盛大に開催してまいります。

今年11回目を迎え、いまや冬の風物詩として定着した「小野ハーフマラソン」や、小野市の商工業の振興と地域経済の活性化を図る「おの恋楽市楽座」についても、地域のつながりを生み出すイベントとして、市制70周年にふさわしい賑わいづくりに向け、元気な小野市を発信してまいります。

このような取組を“し続ける”ことで、「賑わいづくり」が「誇りづくり」へ、そして、その誇りづくりが郷土を愛する「愛着づくり」へとつながっていくものと考えております。

また、小野商店街では、活気あるまちの実現に向けて、店舗の「所有者」及び「出店者」に対し、それぞれ店舗改修費等の2分の1を助成する制度を構築したことにより、この3月中頃には、空き店舗を活用したコワーキングスペースなどに利用できるスペースがオープンする予定です。

地域力の要となる自治会活動に対しては、持続可能性を高めるため、令和5年度から、電子回覧板の導入やスマホ教室の開催など、地域のデジタル活用に向けた支援を開始しております。従来の「地域のきずなづくり事業」と合わせ、意欲ある自治会・地域に対して、自治会業務の負担軽減、効率化のためのデジタル化を支援してまいります。

健康づくりやボランティア活動の促進を図ることを目的に実施している「おのアクティブポイント制度」は、市公式LINEを活用し、従来の紙ベースから電子ポイントに変更することにしております。貯まったポイントは電子マネーとして利用でき、対象年齢を20歳まで引き下げ、若い世代の地域活動への参加も促してまいります。

≪3. 子育て支援・教育環境の充実≫

次に、3つ目の重点項目である「子育て支援・教育環境の充実」についてであります。

令和6年度からは、「1歳6か月児健診」及び「3歳児健診」に加え、新たに生後1か月時に医療機関において受診する「1か月児健診」への費用助成を開始することで、切れ目のない健診体制を整え、安心して育児ができるよう支援してまいります。さらに、早産や低体重児出産などのリスクが危惧される妊娠期のむし歯・歯周病を予防するため、妊婦の歯科検診助成も開始することにしております。

県内でいち早く導入した「高校3年生までの医療費の所得制限なしでの完全無料化」に加え、同じく所得制限のない不妊治療ペア検査、不育症治療費の助成など、手厚い出産、子育て支援策を継続して実施するとともに、妊娠・出産時にそれぞれ5万円を支給する「妊娠・出産・子育て応援ギフト事業」についても、引き続き実施いたします。

法人保育所の「認定こども園化」につきましては、少子化に対応した保育機能の再編等に向けて、現在積極的に取り組んでおります。本年4月には7園目となる「小野こども園」が誕生する予定であり、同時に、「育ヶ丘保育園」では、安全対策として老朽園舎の改修工事に着手することにしております。

次に、「教育環境の充実」でありますが、超スマート社会(Society5.0)を豊かに生き、自ら未来を切り拓く人づくりに向けた「おの夢と希望の教育」を継続して展開しております。教育行政顧問である東北大学の川島隆太教授のもと、『脳科学理論』に基づいた16か年教育を推進し、「おの検定」や充実した「理数教育と英語活動」など、特色ある小野市独自の教育施策を展開しております。

急速に進展するICT教育への対応につきましても、サポート体制を整えた“GIGAスクールプロジェクト”により、子どもたちが新しい時代に求められる能力を備え、学力を向上させられるよう環境整備を行ってまいります。

令和6年度からはデジタル環境を拡大し、従来からの児童生徒情報の一元化、成績管理を行う「校務支援システム」の運用に加え、各中学校に「デジタル採点システム」を導入し、詳細なデータ分析を基にした「個に応じたきめ細やかな指導・評価」の充実を図るとともに、教職員の業務の効率化を図ることにしております。

また、コロナ禍を経て生活環境が変化する中で、不登校対策の取組について、今までの支援体制を見直し、登校させることを目標にするのではなく、社会的自立を目指す支援へとシフトすることにしております。

そのため、「適応教室」を「教育サポートセンター」として多方面からサポートが行える組織へと発展させ、登校支援だけでなく、個別最適な教育相談や教育支援を担う組織へと変革させてまいります。併せて、「校内サポートルーム」を市内各中学校と一部の小学校に設置し、支援員も配置することで、様々な支援体制の充実を図ってまいります。

部活動の地域移行については、新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の構築と、教職員の働き方改革という双方の観点から、部活動の段階的な地域移行を進めてまいります。

これらにより、教職員の負担を軽減し、児童生徒に向き合う時間を充実させることで、結果的に、子どもたちの教育内容の充実につながるものと考えております。

昨年9月に着手した「旭丘中学校」の校舎長寿命化改修については、順調に工事が進捗しており、令和6年11月には、新校舎へと生まれ変わります。令和6年度では、熱中症対策や災害時の避難所利用なども想定し、空調設備を備えた体育館の改築に向けた設計を進めてまいります。

また、その他の学校施設においても、各教室の空調設備の更新、教室照明のLED化、エレベーターの設置など、質の高い学習環境の整備を計画的に進めるとともに、市内2園の幼稚園を統合する「おの幼稚園」については、『脳科学理論』に基づいた幼児教育の実践の場として、いよいよ建設工事に着手してまいります。

その他、スポーツ活動の拠点である総合体育館アルゴの屋根改修やアクトのアリーナ照明改修のほか、「小野希望の丘陸上競技場アレオ」についても全天候型タータントラックの補修など公認継続に向けた整備を行います。

≪4. 安全・安心に暮らせるまちづくりの推進≫

最後に、4つ目の重点項目である「安全・安心に暮らせるまちづくりの推進」についてであります。

近年、異常気象に伴う集中豪雨により、従来の浸水想定を上回る水害が全国各地で発生しておりますが、県内最大の一級河川である「加古川」の新大河橋南側左岸の河川空間において、洪水時の緊急復旧活動拠点と親水エリアや交流広場などを一体的に整備する「かわまちづくり事業」を、国土交通省と共同で進めてまいります。

また、救急車等の緊急車両の通行が困難となっていた池尻町の「市道4309号線」や、河合中町「市道2148号線」について、狭小な集落内道路の拡幅工事を進めるほか、「市道片山高田線」では、多くの学生が通学路として利用する歩道の新設等を順調に進めており、令和6年度中に整備が完了する予定であります。

開始から20年を迎える「安全安心パトロール」は、隊員が警察官OBならではのプロの視点で、犯罪が発生しやすい場所への警戒を行い、環境美化活動や通学路の見守り、地域コミュニティへの交通安全教室など、市民の防犯・交通安全意識を高める活動を展開しております。

ピーク時の平成13年には1,473件であった市内の刑法犯認知件数は、令和5年に231件と84%も減少するなど、地域全体で犯罪を未然に防ぐための取組が、“見える成果”として現れ、市民の体感治安の向上に寄与しているものと考えております。

併せて、令和6年度からは、特殊詐欺被害が過去最悪のペースで増加していることを踏まえ、高齢者に対し、防犯機能付き電話機等の購入費用助成を新たに開始するほか、迅速な初期消火により被害を軽減するなど減災対策の取組を進めるため、自治会が設置、管理している消火栓ボックスやホースなどの附属品を購入する際に、20万円を上限として費用の半額を助成することとしております。

さらには、住宅や道路の危険木の伐採、撤去及び処分についても一部助成するなど、自分たちの地域は自分たちで守るという意識の醸成を図るとともに、安全・安心で住みよいまちづくりを推進してまいります。

「新型コロナウイルスワクチン接種」については、これまで全額国費で実施してきましたが、令和6年4月から国の定期接種に位置付けられ、被接種者に費用負担が生じることとなるため、65歳以上の高齢者等が接種される際の自己負担額の一部を助成することにしております。

さらに、インフルエンザ予防として、生後6か月から高校3年生までの子どもを対象に、予防接種の自己負担額の一部について助成を開始することとしております。接種費用を助成することで、子育て世帯の負担軽減や医療費の削減につながるほか、接種率が向上すれば保護者世代への感染拡大も防止でき、市民全体の感染者を減少させる効果が期待できると考えております。

コロナ禍を経て、社会生活や人々のライフスタイルが大きく変化を遂げ、社会的な孤立を背景とする「8050問題」をはじめ、福祉分野においては様々な課題が、複雑化、多様化しております。

「子ども、障がい者、高齢者」といった対象者の属性や、「要介護、虐待、生活困窮」といった要因別の縦割り対応では、複雑に絡み合う課題への対応が困難であることから、新たに支援員を配置し、既存の枠組みを超えて多様な福祉支援ニーズに対応することが出来るよう、「重層的支援体制」の整備に取り組んでまいります。

高齢者の社会参加を促す「らんらんバス」は、“福祉施策”の一環として運行開始から20年を迎え、現在、11ルート、175停留所を9台体制で運行しております。コロナ禍で落ち込んだ利用者数も順調に回復し、令和5年度は、過去最高の18万9千人に迫る見込みで、市内高齢者だけではなく、通勤利用や小学校のスクールバスとしての役割をも担う、市民に欠かすことのできない重要な移動手段となっています。

さらに、令和4年10月から運行を開始した「らんらんタクシー」は、利用登録者数が1,000人を超え、定時定路線の「らんらんバス」を補完し、高齢者の買い物や通院などの多様な移動ニーズに応えることで、高齢者の生きがい・健康づくりの一翼を担っています。

最後に、北播磨総合医療センターの機能強化についてであります。
開院から10年を迎えた「北播磨総合医療センター」は、北播磨圏域最多となる34診療科、450床もの病床数を有し、北播磨圏域における急性期医療の中核病院としての役割を担っております。

コロナ過に伴う看護師不足の影響等により、一時休止しておりました2病棟については、うち1病棟をこの3月から再開いたします。今後も、看護力の増強に合わせて実稼働病床を順次増加させてまいります。

一方、医師については、患者数の増加等に伴い、建設当時の想定を上回る約180人が在籍しており、手術室や医局等が不足するなどの状況が生じております。

この状況を解消し、北播磨総合医療センターが有する本来のポテンシャルを十分に発揮させるために、手術室の増設や医局の拡張、救急エリアの充実を行うとともに、北播磨圏域の中核病院として、連携強化を推進する必要があることから、病院西側の駐車場エリアに新病棟を増築し、感染症への備えや病床の再編、地域連携部門の拡充を図ってまいります。

今後も、地域完結型の医療体制の構築を推進し、地域医療におけるニーズの変化に柔軟かつ迅速に対応しつつ、安全で質の高い医療を提供し続けてまいります。

予算総額と健全な財政運営

以上、令和6年度予算は、一般会計232億6千万円、特別会計103億6千万円、企業会計52億9千万円で、総額を389億円としております。

財政状況については、様々な事業を実施する一方で、行政運営を効率的に進めてきた結果、私が市長に就任した平成10年度と比較しますと、基金、いわゆる預金の残高が52億円であったところ、令和6年度末において、依然75億円の基金残高を確保できる見込みであり、独自の財政指標のガイドラインである70億円を堅持できる見込みであります。

一方、借金にあたる地方債残高は、学校施設の長寿命化改良工事や、新都市南北線の整備などによって、平成10年度の約169億円から、令和6年度末には約206億円と、37億円増える見込みでありますが、206億円のうち約7割にあたる136億円は、後年度に国から補てんされるため、市の実質負担は約3割となる70億円であります。

また、次世代が負担すべき借金を計る「将来負担比率」は、決算が確定した令和4年度において0.5%であり、引き続き令和6年度も県内市平均を下回る見込みで、将来に「ツケ」を回すことなく健全財政を堅持できるものと考えております。

今期定例会には、一般会計予算案をはじめ、21件の議案を提出しております。細部につきましては、各担当者が説明いたしますので、慎重にご審議のうえ、ご決定いただきますようお願い申し上げます。なお、定例会中に、追加議案の上程を予定しておりますことを申し添えます。

おわりに

「変えよう小野、変わろう小野市」というスローガンを掲げ、小野市政改革に全力で取り組んできてから、既に四半世紀が経過しました。これも、ひとえに市民の皆様のご理解、ご協力の賜物であると深く感謝申し上げる次第であります。

その間に時代は大きく変わり、避けることのできない超高齢社会、人口減少、地球温暖化などを背景として産業構造や生活スタイルなどの価値観が急激に変化していることを肌感覚で実感できるようになってまいりました。

世界に占める日本の国内総生産(GDP)シェアも、1994年(平成6年)に18%を記録して以降低迷し、最近では4%台と言われており、経済力での日本の地位は大きく揺らいでおります。世界的にみてもグローバルサウスと呼ばれる新興国が台頭し、国際社会の軸が、北から南へと動き、従来の常識が覆る「ポーラーシフト」の時代に入ったと言われております。

進化するテクノロジー同士が融合することで、急激な社会変革が加速度的なスピードで変化していく中にあって、我々の持つポテンシャルを理解し、DXやGXの必要性が叫ばれている時代の潮流を俯瞰し、その本質を見極め、人口が減少しても、持続可能な新たな小野市を築いていかなければなりません。

リーダーに求められるのは、この加速度的な変革に柔軟に対応しながら、「地震大国」日本という現実に向き合い、変化していく未来の情勢の変化をしっかり見極め、物事の本質を見抜く「洞察力」、目指す目標を達成するために行動につなげ、新しい価値観を生み出す「構想力」、そして責任ある「決断力」であることは、何ら変わるものではありません。

そのためには、従来型の凝り固まった価値観から脱却し“今まではこうであったという前例を踏襲することなかれ、かくあらねばならんという固定観念に捉われることなかれ”と、“我がまち小野”の希望ある未来を切り拓いていくことが、我々に課せられた責務であり、使命であります。

「政治とは無限の理想への果てしなき挑戦」であります。
「不易流行」のごとく、変わらない「行政経営」という本質を持ちつつ、変化し続ける情勢を洞察し、それに柔軟に、そしてポジティブに挑戦し続けるため、粉骨砕身、邁進してまいりますので、皆様のより一層のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

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