箱膳

 


 その昔、家族の一人一人が、自分専用の飯茶わん・汁わん・小皿・箸の入った木箱「箱膳」を持っていました。食事のときは、主食のお米、汁物、家庭の味の漬物、郷土料理の主菜をそれぞれの器に盛りました。そして、箱膳のフタを裏返したお膳に食器を並べ、家族が向かい合い「いただきます」と手を合わせたものでした。食事が終わると、茶わんに湯を注ぎ、一切れ残した漬物できれいに器をすすぎ、漬物を食べて湯を飲み、最後に布巾で食器を拭いて、箱膳に戻しました。今のように脂っぽい料理はなかったため、食器を清めるのに余計な水や洗剤を使う必要がなく、極めて環境に優しかったのです。食卓(ちゃぶ台)を囲むスタイルが普及するまで、「箱膳」は日本独特の食事文化でした。