墨塗り教科書


墨で消された目次(左)と内容(右)
 

昭和20年(1945)8月15日、日本の敗戦によって太平洋戦争は終わりました。そして日本は昭和26年のサンフランシスコ講和条約の締結まで連合国による占領支配がおこなわれます。終戦で人々の暮らしは大きく変わり、特に学校での教育内容は激変します。前回紹介した国民学校の教科書は、戦争を国民全体が一致団結して戦うための内容でしたが、戦後はGHQの指導のもと、民主主義に基づいた内容に変わります。しかし、終戦後は物資も不足し、新しい教科書を作ることは大きな作業でした。そこでしばらくは、国民学校の教科書の戦争教材や国家主義的な意味合いの強い部分を切り取ったり、墨で塗りつぶして使いました。これがいわゆる「墨塗り教科書」と呼ばれるものです。写真の教科書は、『初等科国語六』で、削除された部分は目次まで墨で塗りつぶされています。本文は、不適切とされた部分が切り取られ、ページの続きの関係で切り取れない部分は墨で塗りつぶされています。昭和21年には新聞大のわら半紙を自分でA5版の大きさに製版する粗末な教科書が作られ(通称「パンフレット読本」)、翌22年に、ようやく新しい教科書が完成します。