初等科修身~国民学校の教科書~


教科書表紙(左)と本文(右)
 

昭和16年に尋常(じんじょう)小学校は一斉に『国民学校』」という名に変わり、一致団結して戦争に立ち向かう体制を国が作り上げていきました。尋常小学校へ通っていた子どもたちは通学を続けましたが、学校生活は一転し、教科書も修正されました。それが、国民学校の教科書です。例えば、修身の教科書で扱われた人物は、最初は『天皇』、最後は『皇后』です。修身では個人・社会・国家などに関する内容が取り上げられますが、この時期の教科書は特に神話が多く扱われました。明治時代初期まで『作文』と呼ばれた教科は『綴方(つづりかた)』に変わりました。『作文』では、教科書の模範文を手本として文章を作らせていましたが、『綴方』では、生徒が日常見聞したことを中心に、自由に発表する方法に改めたのです。特に変化の大きかったものが歴史で、それまでは史実を述べる形で、範囲も広く世界史までを扱っていたのが、次第に国史が重視され、天皇の業績を多く扱うようになり、国家が全面に出されるようになっていきました。地理は、明治10年代の教科書では身近な郷土から始まっていたのが、日本全図から始まりました。理科や数学は、知識や理論中心から、実験・観察を重んじる方向へ転換しました。