尋常小学読本~国定教科書へ~

 

明治37年(1904)に日露戦争(にちろせんそう)へ突入する頃、教科書は検定から国定制度へと変わりました。国定教科書は昭和20年(1945)まで使われ、その間に幾度か修正されました。例えば、『尋常小学読本』は、巻頭の一字から、最初「イエ・スシ読本」(1~8巻)とよばれました。これは、イとエ、スとシの発音を正しく教えて、地方のなまりを矯正することから始まっていました。その後、明治40年に尋常小学校の年限(義務教育)が4年から6年に延長されたことで、明治43年(1910)に教科書が修正されました。それは、黒表紙本で、「ハタ・タコ読本」(1~12巻)とよばれる通り、巻頭に登場する単語は「ハタ」であり、単語の下には日の丸の旗が表されてます【写真】2ページ以降も単語と絵がセットで描かれ、次第に短文へと進みます。教材としては、国民的行事、習慣、趣味あるいは、童話、伝説、神話などが多く取り入れられ、文学読本的色彩が濃くなりましたが、一面、冒頭の国旗に象徴されるように国家主義的精神をうたう教材も採用されはじめました。