尋常小学読本~検定教科書~

 

明治5年に「学制(がくせい」が公布されても、教科書は寺子屋時代とあまり変わらなかったことは前回紹介しました。        
では、日本の教科書はいつごろから大きく変わったのでしょう。変化が起きたのは明治19年(1886)のこと。「小学校令」が制定され「小学校ノ教科書ハ文部大臣ノ検定シタルモノニ限ル」とあるとおり、文部省が設けた検定基準に基づき、教科書の点検を行うことになったのです。教科書はこれを機会に、学年別、児童・生徒の発達段階別に編集されるようになり、内容が次第に画一化していきました。このような検定教科書制度を実施するにあたり、文部省が手本として編んだ国語学習入門の教科書が「読書入門(どくしょにゅうもん」(明治19年刊)です。尋常小学校へ入学して半年間は、まずこれに親しみ、1学年後期から次の『尋常小学度読本』(明治20年刊)を学びました。これらは義務教育期間4年間(4学年まで)の国語教科書で、各学年につき前期・後期各1冊ずつ(全7巻)使いました。1巻は話し言葉『口語文(こうごぶん)』ですが、2巻より書き言葉『文語文(ぶんごぶん)』となります。例えば、2巻最初の話「学校」を見ると、「吾等は、きょねんの春より學校に入れり。(中略)故に、吾等ハ、學校をはなはだたのしきところと思へり。」といった調子です。小学2年生の教科書ですが、文体の調子や画数の多い漢字を見ると、今の教科書より難しく感じますね。