六諭衍義大意(りくゆえんぎたいい)~教訓書~


教科書表紙(左)と亀蔵の業績を伝えるページ(右)
 

今回は、江戸時代の寺子屋や藩校の教科書(シリーズ1・2)のなかで、小野に関係する本をひとつ紹介します。
それは、江戸時代の中期につくられ、近代はじめまで広く普及し、家庭や寺子屋で学ばれた教訓書『六諭衍義大意(りくゆえんぎたいい)』です。「六諭」とは、中国の清の時代(今から約450年前)に定められた「父母に孝養をつくすこと」「目上の人を敬うこと」「近所相互に仲良くすること」「子弟を教え導くこと」「それぞれの生業家職に精励すること」「道理にしたがうこと」の6つの教訓を指します。「衍義」とは解説書のことで、全3巻(上・中・下巻)になります。この本を使って、庶民の教化をはかろうと、小野藩内の村を廻(まわ)って教えたのが、藩校帰正館(きせいかん)の先生・大国(野々口(ののぐち))隆正(おおくにたかまさ)の娘婿である正武(まさたけ)でした。14日間で26か村の村人に具体例をあげながら話して聞かせたそうです。また、この本を小野に広めたのは、豪商近藤亀蔵(こんどうかめぞう)でした。亀蔵は加古川舟運で大金持ちとなり、治水灌漑のための池づくり(鶴池・亀池)や新田開発を行っていました。それらの話を、「衍義」の下巻に挿入して出版したのです。この時代、『六諭衍義大意』は寺子屋の教本として使われるのが一般的で、小野のように藩が中心となって教えを広めようと重用したのは稀(まれ)な例だったようです。