一ねんせいのこくご~戦後の検定教科書~


表紙(左)と内容(右)
 

昭和24年(1949)、新たに検定教科書が採用され、多くの教科書会社がそれぞれ個性豊かな教科書を出版し、教師が自主的に選択するようになりました。昭和26年には、小学校・中学校の教育課程の改訂が行われ、『一ねんせいのこくご 下』(昭和29年発行)ができました。最初の話は「お正月」です。小学校入学後、初めてのお正月を迎える1年生にふさわしい話をはじめ、イソップ童話を劇化した「ねこのすず」や擬人文等が登場します。【聞く】【話す】【読む】【書く】【作る】の5つが働きあい、国語学習が能率的に楽しく進むように構成されています。監修者の一人志賀直哉(しがなおや)(小説家・1883~1971)は、教科書の冒頭で『からだをじょうぶにして、長生きをしてください。(中略)これから七十年も、それ以上も生きるのだから、ゆったりとした気持ちで、のびのび育ってください。心がけのいい人になってください。(中略)みながいい人になれば、世界中の人がみな、幸福になれるのです。(後略)』と、戦後の新時代を担う子どもたちに温かい言葉で語りかけています。検定制以降、教科書そのものの価値観は、教科書「を」教えるという考えから教科書「で」教えるに大きく変わり、現在に至ります。