雛人形の持ち物~桧扇(ひおうぎ)~

 

3月は雛祭りの季節!今回ご紹介するのは、雛人形の持ち物、桧扇の巻♪
初期の扇は、20~30枚重ねた桧の薄板ー木簡〈もっかん〉ーの片方を綴じ、もう片方を糸で連ねて、開閉できるようにした桧扇とよばれたもので、平安時代の宮廷貴族の装束には欠かせないものでした。当初は備忘用の筆記用具、いわゆるカンニングペーパーとして使われ、日本独特の発想だとか。男の桧扇は無地で、薄板の枚数によって身分が決められていました。女性の桧扇は近世、薄板の枚数が39枚にもなり、男性の扇よりも装飾性が強く、室町時代以降は大型化しました。胡粉〈ごふん〉ー(貝殻を焼いて作った白い粉)ーで下地を施した上に、金・銀色などで花鳥・風景・人物を描き、両端(親骨)には「糸花」と呼ばれる造花をつけ、さらに五色の糸で「蜷〈にな〉結び」に組んだ紐を結び付けて飾りにしました。まさしくお雛様が手に持つ扇そのものですね。ちなみに、竹を骨にして片面だけに紙を貼った扇は「蝙蝠〈かわほり〉扇」と呼ばれ、男性・女性ともに夏季用として使用していました。今でいう扇子です。現在のように、両面に紙を貼った扇子に変化したのは、鎌倉時代に中国から逆輸入されてからのことだそうです。